理想の陶土と自然を求めて、山形県大石田町に移り住んだブルーノ・ピーフル。5年前の震災で愛蔵していた自作の多くが破損したが、薪窯の灰をかぶった蛸の花器は、炎と揺れに耐えた自信作。若手写真家が事務所開設の記念に購入した。
手仕事グループ「山姥座」は、縄文から変わらない技術でカゴなどを編み組む里山の先達(センダツ)とともに山に分け入り、自然素材の採集や手仕事を習う。その成果を並べた「山姥市」は、モノではなく山の技術を伝える市であった。
DIYメーカー石巻工房と東北芸術工科大学が共同制作した木工教材「bento」。パーツを組み合わせると小さな家具がつくれるが、あえて設計図はない。自分で考えて・つくる「Do It Yourself」の大切さを石巻から世界の子どもたちへ。
アーティストらが廃業した旅館をセルフリノベートしたアパート「ミサワクラス」。入居者が不定期開催する「住み開き」のアートイベントに惹かれて、兵庫から移住・入居した音楽家・白丸たくトの自主レーベル「TRIP CHILDS RECORDINGS」と彼がセレクトしたカセットテープ。
高齢化により耕作放棄された果樹の再生に取り組む東根市の「松栗」の桃を、鶴岡の名リストランテ「アル・ケッチァーノ」がピザにした。樹上で完熟させた甘い桃と庄内豚ベーコンの塩気が絶妙。山形の風土そのもののピザ。
「ブックトープフェス」にあわせ、工芸家・川地あや香がつくった「文字を食べる」グラノーラ。岐阜出身の川地は東京藝術大学で金工を修めた後、夫君の郷里である山形にIターン。「カワチ製菓」名義のカトラリーとおやつにファンが多い。
東北芸術工科大学で陶芸を学び、ミサワクラスで同世代のアーティストと共同生活をおくった後、現在は福島県須賀川市で作陶する根本裕子。不思議な陶のオブジェや器は、震災や介護など、作家本人の体験を色濃く反映している。
spoken words projectの飛田正浩が、山形県寒河江市の佐藤繊維とコラボレートした服。紡績・編立・製品まで山形でつくったウォッシャブルウールの高品質ニットに、飛田が1点ずつ異なるプリントを施した。モチーフは庄内砂丘をモデルに書かれた安部公房の小説『砂の女』。
「6次元」店主のナカムラクニオが、本好きの市民有志と1年かけて取材・執筆・編集した、山形市中心市街地を舞台にした短編小説集。山形ビエンナーレの会期中に1万冊を無料で配本した。「街を読む」ブックツーリズムのススメ。
「山姥市」でひときわ注目を集めた髙橋伸一の藁細工。山形県真室川町の稲作・畑作と畜産を営む農家の5代目である髙橋は、22年勤務した役場職員を辞め、今年「工房ストロー」を立ち上げた。現代の暮らしに合わせた藁細工を提案。
刺し子は保温や補強のため始まったとされ、山形には日本三大刺し子のひとつ「庄内刺し子」が伝わる。若手作家が手がける美しい刺し子のお守り(艸絲+吉田勝信)は、宗教や思想を越え、自然に寄り添うものづくりの護符のよう。