{ モノ・ローグ }

「山のヨーナ」のモノがたり
絵本作家の荒井良二さんが監修した物語の市「山のヨーナ」は、荒井さんが構想中の同タイトルの絵本をもとに、山形在住の8組の家族が物語をつくる連続ワークショップ。研究会では、一人ひとりがその物語の登場人物となり、山の少女・ヨーナが山の麓で営む土産店に並ぶ〈おまもりのようなもの〉をつくりながら、ヨーナの世界に参加していきました。ここでは、それぞれの家族がつくった〈おまもりのようなもの〉のモノがたりをご紹介します。

8組の家族がつくった〈おまもりのようなもの〉は、絵本の主人公・ヨーナが山の麓で営む土産店に並ぶひと品。どんな力や祈りがこめられているのか、どうしてそんな形や色をしているのか、どのように使うのか…など、それぞれがおまもりにまつわる物語やシーンを設定し、一つひとつつくりました。物語の断片のような小さなおまもりたち、私たちをヨーナの世界へ誘ってくれます。
#1 イワナミン家のモノがたり

●我が家のおまもり(ヨーナの店にありそうなもの)
和紙で舟をつくり、蜜蝋に浸して黄色い舟をつくりました。
この舟には、自分の故郷を出ていく人たちが、安全に旅ができますようにという願いを込めました。
自分が持ち歩く旅の荷物に、この舟を赤い紐で結えつけます。

イワナミン(宮本武典)/カジカー(宮本由実)/イタチィ(宮本結子)/リッスン(宮本桔和)
#2 カワウー家のモノがたり

●我が家のおまもり(ヨーナの店にありそうなもの)
蝋燭の蝋を溶かしてどんぐりの形にしたものに、本物のどんぐりの「笠」をかぶせてつくったどんぐりのアクセサリー風のおまもりです。
装飾品として腰に身につけます。
小さなこどもたちが魅力的な大人になりますようにという願いを込めました。

カワウー(小関司)/テンテン(小関文恵)/オコジョー(小関春)#3 タヌキィ家のモノがたり

●我が家のおまもり(ヨーナの店にありそうなもの)
このお守りはトチノミでできています。トチノミは胃の調子をよくしたり、肌をつやつやにしたりする効果があるので、持ち歩いていると病気にならないおまもりをつくりました。
家の近くで拾ったトチノミを、お父さんが実を彫刻刀で削って丸い穴をあけて、お母さんと私で中身を全部くりぬきました。
トチノミの上には、藤の種を半分に切って焼いたものを付けて、いつでもいい香りがするようにしています。

タヌキィ(鈴木敏志)/キノココ(鈴木凛)#4 ハッチー家のモノがたり

●我が家のおまもり(ヨーナの店にありそうなもの)
お家の近くを散歩しながら見つけたススキで、出会いのおまもりをつくりました。
拾ってきた木に、クローブとローズマリーを袋で包んだものをシナモンで煮詰めて匂いをつけ、いい匂いにしました。作っていたらだんだんと鳥に見えてきたので、穂先をハートのかたちに結んで羽にして、いい出会いを運んで来てくれるという願いを込めました。ススキと出会いをかけて、「ススキスキー」という名前のおまもりです。木は近くの山を散歩していて見つけたもので、ススキは近所の人が柚子の木の雪囲いに使っていたものを分けてもらいました。水に強いから、とっても頼りになるんだって教えてもらいました。

ハッチー(小板橋基希)/ヤギマー(小板橋千夏)/ヤマメオ(小板橋杏子)/アナグマン(小板橋一太)#5 ミミズチ家のモノがたり

●我が家のおまもり(ヨーナの店にありそうなもの)
家の裏山に落ちていたクルミでおまもりをつくりました。
クルミって、固い殻のなかに食べ物(身)が入っています。それを拾うのは、山の中の宝探しみたいだなと思ったので、宝物を見つけられるようなおまもりにしました。
色は、クレヨンで塗って、その後フライパンで炒ったり、トースターで焼いてみたりして、溶かして付けています。
色ごとに意味があって、時々奇跡が起こるおまもりもあります。
ずっと欲しかったもの、失くしてしまった大切なもの、素敵な出会いなど、おまもりクルミがダウジングのように、それらの宝物まで導いてくれることでしょう。

ミミズチ(月本寿彦)/クママー(月本久美子)/アケビーノ(月本多穂)
#6 ヤマイモン家のモノがたり

●我が家のおまもり(ヨーナの店にありそうなもの)
このお守りには、人々が山を安全に下りられるようにという願いを込めました。
アケビのツルと糸でできたフレームの中に、柚子の汁で模様を描いたあぶり出しをはめ込みました。
自分の荷物につけたり首にかけて身につけます。

ヤマイモン(後藤ノブ)/ユキノ(後藤美雪)/バッタン(後藤奏)/クリム(後藤ののは)#7 ワラビィ家のモノがたり

●我が家のおまもり(ヨーナの店にありそうなもの)
クルミの木と蜜蝋でコーティングした糸で作ったお守りです。
私たちはヨーナが住んでいる山の谷で橋をつくる仕事をしているので、その橋を越えてくる旅人たちが、私たちがつくった橋を安全に渡れるようにという祈りを込めました。
旅人が自分のポケットに入れて持ち歩きます。

ワラビィ(山川雄大)/コゴミーノ(山川千夏)/ボックリ(山川愛華)/サルー(山川絢未)#8 キジルー家のモノがたり

●我が家のおまもり(ヨーナの店にありそうなもの)
大切な人が厳しい寒さの日も、雪の降る日も無事に家に帰ってこられるように願いを込めた「冬のお守り」です。家族で山形に引越してきて2回目の冬。厳しい寒さの中で、子どもたちが今日も無事でありますようにと心のどこかで思うようになりました。安全であることがあたりまえだと思っていた都会暮らしでは、そんな風に考えたこともなかったのに。そんな実感から、冬に似合う、冬のためのお守りがあったらと思い、子どもたちと一緒につくりました。材料は、藁と糸と毛糸です。まず、藁をやわらかくするために、お鍋に沸かしたお湯に藁をつけます。その後、長さを揃えてカットして、糸でつないでいきます。タッセルは、毛糸を巻いてつくり、藁とタッセルを糸でつなげたら完成です。

キジルー(西村隆彦)/ウルイー(遠藤綾)/オーロラン(西村ゆろ)/クルミオ(西村かや)

●市プロジェクト・ウィークエンド〔第3期〕
荒井良二と8組の家族による展覧会「山のヨーナ」

2018年2月8日[木]〜18日[日] 12:00~19:00(入場無料・2/13[火] 休)
会場:とんがりビル KUGURU (1F)
主催:東北芸術工科大学